不法滞在者でも収容されないの? 出国命令制度とは
さて、入管法上不法滞在(非正規滞在)には3つの態様があります。
まずはそこから確認してみましょう。
(1)不法入国
(入管法:第3条1項2号)
(2)不法在留
不法入国者または不法上陸者が日本上陸後も引き続き不法に在留している場合(入管法:第70条2項)
(3)不法残留
在留期間の更新または変更を受けずに在留期間を経過して日本に残留している場合(入管法:第24条4号ロ)
例えば、観光などの目的で「短期滞在」ビザで入国し、在留期間を経過した後も帰国せず、日本で就労しているケース(いわゆるオーバーステイ)などが不法残留にあたります。
入管法上の罰則
(1)(2)(3)ともに「3年以下の懲役若しくは禁固若しくは300万円以下の罰金」に処せられます。
(入管法:第70条1項1号・2号・2号)
強制事由に該当しますが、(3)は入国当初は在留資格を有する正規滞在者であった点で比較的(1)(2)よりも悪質性が低いとされ、「出国命令制度」の対象となります。

「出国命令制度」とは?
下記の要件を全て満たす不法残留者について、身柄を収容しないまま簡易的な手続きにより審査を行い、出国させる制度です。この制度で出国したものは上陸拒否期間が1年間に短縮されます。(通常は最低でも5年間上陸を拒否される)
冒頭に触れましたが、「強制送還」された場合と比べ大きく優遇されているポイントです。
「出国命令対象者の要件」
(1) ア又はイのいずれかを満たすこと
ア 違反調査の開始前に速やかに本邦から出国する意思をもって自ら出入国在留管理官署に出頭したものであること
イ 違反調査の開始後、入国審査官による認定通知書を受ける前に入国審査官又は入国警備官に対して速やかに出国する 意思があることを表明したこと
(2) 不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと
(3) 窃盗罪等の一定の罪により懲役又は禁錮に処せられたものでないこと
(4) 過去に本邦から退去強制されたこと又は出国命令を受けて出国したことがないこと
(5) 速やかに本邦から出国することが確実と見込まれること
「出国命令制度の流れ」
①入国警備官:出国命令対象者に該当することを認めた場合に入国審査官に引き継ぐ
②入国審査官:出国命令対象者に該当するかどうか審査し、該当すれば主任審査官に通知する
③主任審査官:15日を超えない範囲内で出国期間を定め、「出国命令書」を交付し、出国を命じる
