管理措置制度とは
退去強制手続における収容に代わる選択肢として令和5年に新設された制度です。退去強制に付された外国人の逃亡の恐れの程度、「収容による受ける不利益の程度等を考慮して相当な場合」には、管理人による管理に付し、収容せずに手続きを進めるとともに、収容する場合であっても、3カ月ごとに管理措置に付するか否かを見直すことにより、収容の長期化の防止を図る制度です。
「収容による不利益の程度等を考慮して相当な場合」か否かは主任審査官によって判断されます。
被管理者に付される条件
主任審査官によって管理措置の対象者と判断された者(被管理者)は収容されること無く、退去強制手続きが進められていきますが、その期間中は一定の条件が付され、これに違反して逃亡または正当な理由なく呼出しに応じない者は1年以下の懲役もしくは20万円以下の罰金、または併科される規定が設けられています。
条件①:住居及び行動範囲の制限
条件②:呼出しに対する出頭の義務
条件③:その他逃亡及び証拠の隠滅を防止するために必要と認める条件
条件④:300万円を超えない範囲内で保証金を納付すること(被監理者による逃亡等を防止するために主任審査官が必要と認めるとき)
条件②の出頭義務の他にも、被管理者にはいくつかの義務が課せられています。
被管理者の義務
監理措置に付された日または直近に届出をした日から3月以内の範囲内で指定された日に、「被監理者」の方の事務を担当している地方出入国在留管理官署の主任審査官に対して、監理措置条件の遵守状況や報酬を受ける活動の許可を受けて行った活動の状況などを届け出しなければなりません。
※この届出は郵送では受け付けてもらえず、非管理者本人が直接窓口に出頭して行わなければなりません(入管法:第44条の6)
被監理者に交付される「監理措置決定通知書」には、携帯・提示義務があり、この義務に違反した者は、10万円以下の罰金に処する旨の規定があります。
管理人の役割と責務
管理人とは文字通り、被管理者を管理する役割を担う者であって、その任務遂行の能力を考慮して適当と認められる者の中から、主任審査官により選定されます。監理人の任務遂行能力は、監理人になろうとする方の年齢、性格、職業、収入、監理措置決定を受けようとする外国籍の方との関係性を総合的に勘案して判断されます。しかし、原則として、次に掲げる方は、任務遂行の能力があるとは認められないので、管理人となることは出来ません。
未成年者
精神機能の障害により監理人としての任務を遂行するに当たっての必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
在留資格を有していない外国人
管理人の責務
①被監理者の生活状況の把握、被監理者に対する指導・監督を行うこと
②被監理者からの相談に応じ、被監理者に対し援助を行うよう努めること
③主任審査官から報告を求められたときは、報告を行うこと
④届け出るべき事由が発生したときから7日以内に届け出なければならないこと
と、4つの責務があるのですが、行政書士には守秘義務があるので③と④の責務を果たすことは難しく、行政書士(弁護士も同様)が管理人を兼務することは実務上不可能と私は考えています。
報酬を受ける活動の可否
退去強制手続き中において、「退去強制令書」の発布前に管理措置の決定を受けた者は※一定の条件付きではありますが、報酬を受ける活動の許可を得る可能性があります。一方で、「退去強制令書」の発布後に管理措置の決定を受けた者には残念ながらこの特典はありません。
※一定の条件とは以下の3つが「監理措置決定通知書」に記載され、その範囲内でのみ許可されます。
①勤務先
②活動の内容
③報酬額の上限
なお、報酬を受ける活動とは「本邦の公私の機関との雇用に関する契約に基づいて行う報酬を受ける活動として相当であるもの」とされており、【会社を経営すること】は、これに該当しないため、収入を伴う事業を運営する活動は認められないので注意が必要です。