血統主義と出生地主義
国籍を取得する原因は大別すると
・個人の意思によるもの(例:帰化申請)
・個人の意思によらないもの(例:出生)
に分けられますが、帰化申請については別の記事にしていますのでここでは割愛し、出生によって自動的に与えられる国籍に絞ります。
つまり、生まれてきた赤ちゃんはどの国籍を取得するの?ってことなんですが、これが複雑化するのは世界には「血統主義」を採る国と「出生地主義」を採る国が混在している為です。
血統主義とは
血統主義とは、その国の領土内で生まれたかどうか?にかかわらず、父または母が自国民であれば、子にもその国の国籍を付与する主義のことです。
これを採用している国は
日本・中国・韓国・イタリア・ドイツ・フランスなど、アジアとヨーロッパに多く見られます。
出生地主義とは
出生地主義とは、父母の国籍にかかわりなく、その国の領土内で生まれた子に国籍を付与する主義のことです。
これを採用している国は
アメリカ合衆国・カナダ・ブラジル・オーストラリアなど、南北アメリカ大陸やオセアニアに多く見られます。
以上を踏まえた上で本題に進みますよ
無国籍者となるケース
無国籍者となるのは、以下のような場合です。
ケース1
国籍法は、父母両系血統主義を採用していますが(国籍法:第2条1号、2号)、子が出生により日本人である父の国籍を取得するのは、出生時に父との間に法律上の父子関係が成立している場合に限られます。
よって、婚姻していない日本人父と外国籍母との間に生まれた子については、父から※胎児認知を受けていない限り、出生によった日本国籍は取得できないので、母の外国籍を取得できない場合は無国籍者となります。

※胎児認知:子供がまだ母のお腹の中にいる段階で認知すること
ケース2
国籍法は、昭和59年の法改正によって父母両系血統主義を採用していますが(国籍法:第2条1号、2号)、それ以前は※父系血統主義を採用していました。その為、出生主義を採る国の男性と日本人女性との間に嫡出子として日本で出生した子は、いづれの国籍も取得できずに無国籍者となっていました。
※父系血統主義:父親の国籍のみをその子どもが受け継ぐ主義で現在
インドネシア、スリランカ、イラク、イランが採用しています。
ケース3
日本の国籍法には国籍剝奪の規定はありませんが、諸外国には国籍剝奪の規定を設けているケースがあります。この規定によって国籍を剥奪された者が、他に国籍を有しない場合には無国籍者となります。
二重国籍者となるケース
同時に二つ以上の国籍者となるのは、以下のような場合です。
ケース1
いづれかが日本国籍を持つ父母から出生地主義を採る国の国内で出生した子は、日本国籍と出生地国の国籍を同時に取得して二重国籍者となります。
ただし、出生後3カ月以内に※日本国籍留保の届出が必要です。

※日本国籍留保の届出がない場合は出生地国の国籍のみを取得します
ケース2
父母のいづれか一方が日本人、他方が外国人である場合において、その外国人が父母両系血統主義を採る国の国民であるときは、その子は日本国籍ともう一方の外国国籍を同時に取得して二重国籍者となります。

ケース3
日本は、「夫婦国籍独立主義」を採っていますので、日本人が外国人と婚姻しても、日本国籍を喪失することはありませんが、その外国が婚姻によってその国の国籍をGETするという「夫婦国籍同一主義」を採っている場合、外国人と婚姻した日本人は、その国籍も取得するので二重国籍者となります。
ケース4
日本は、「親子国籍独立主義」を採っていますので、日本人が※外国人に認知されても、日本国籍を喪失することはありませんが、認知された子が認知した親の国籍をGETする法制をと採っている国もあります。このような国の国民に認知された日本人はその国籍も取得するので二重国籍者となります。
※外国人に認知された場合だけでなく、外国人の養子となった場合も同様です
ケース5
日本人が外国へ帰化した場合、本人は自己の希望によって外国籍を取得しているので、当然に日本国籍を失います。(国籍法:第11条)ただし、その者の子は日本国籍を失いません。帰化の効力として、帰化者の子にもその国の国籍を付与する法制度の国もあり、この場合、帰化者の子である日本人は二重国籍者となります。
番外編
Q.日本人の母とフランス人の父の子がアメリカ国内で出産した場合、どうなるの?
A.日本・フランス・アメリカの三重国籍者となる
ただし、日本・フランス・アメリカにおいて必要な手続きを経た場合に限ります。

